未払いの残業代を請求する流れや必要な証拠について

残業代請求に必要な証拠・準備

未払いの残業代を請求するためには、主に下記の証拠準備が必要となります。

(1)雇用契約書・労働条件通知書
(2)就業規則(コピー可)
(3)給与明細・源泉徴収票
(4)残業の事実証明
・タイムカード・勤務記録
・業務に関するメールの送受信履歴
・パソコンの起動・終了履歴
・交通系ICカードの利用履歴
・タクシー・駐車場の領収書
・同僚・取引先担当者の証言
・LINE等の日常的に送信していた連絡
・毎日つけていたプライベートな日記
(5)残業内容の証明
・上司からの残業指示に関するメモ・メール
・業務に関するメールの送受信履歴
・パソコン上に残っているファイル・データの保存時間や編集履歴
・同僚・取引先担当者の証言

残業代請求の正当性を主張するためには、会社側が管理しているタイムカード等の勤務記録が特に有効です。また、就業中に車を運転する場合は、タコメーターやドライブレコーダー等も残業の証拠として認められます。

このような勤務記録が存在しない・手元にない場合は、会社で撮影した「時刻のわかる写真」や、労働者がプライベートでつけていた日記、LINEでの連絡等も証拠として認められる可能性があります。

退職後に残業代を請求したい場合の対処法

退職後でも残業代は当然請求することが可能です。むしろ、勤務先である会社との関係悪化を防ぐためにも、多くの方が退職後に残業代を請求しています。

しかし、残業代請求には「残業代が支払われるはずだった給料日から3年」の時効期間(※)が設けられている点に注意が必要です。

(※民法改正前の2020年4月以前の未払い残業代においては「2年」の時効期間が適用)

なお、この時効は在籍中であっても適用されます。

時効により未払いの残業代が消滅しかけている場合は、「内容証明郵便」という残業代請求に関する書面を速やかに送付しましょう。内容証明郵便を送付して未払いとなっている残業代支払いの催告を行えば、半年間時効の成立を遅らせることが可能です。この半年間の間に請求や訴訟を起こすことで、消滅時効を完全に中断させられます。

消滅時効が成立してしまうと、未払いの残業代を請求することができません。そのため、退職後に残業代を請求したい場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

また、退職後の残業代請求は「証拠の準備」が困難となるケースも多くあります。退職後に証拠を集めようと思っても、会社に重要な資料やデータが保管されていることから、なかなか集まらないことも考えられます。

退職後に残業代を請求すると決めている場合は、なるべく在職中に必要な資料を集めておきましょう。事前に弁護士に相談しておけば、あらかじめ必要な資料を把握できます。

在籍中に残業代を請求するメリット・デメリット

メリット(1)証拠を集めやすい
退職後に、社内でしか保管していなかった資料を集めることは困難です。悪質な会社の場合、重要な証拠となる資料や情報(就業規則・勤務記録等)を改ざんされるケースもあります。しかし在籍中であれば、就業規則やタイムカード等の資料の収集が容易となります。
メリット(2)残業代請求の消滅時効を中断できる
残業代請求の消滅時効により、定められた期間が経過すると1ヶ月ごとに未払いの残業代が請求できなくなります。しかし、在籍中に請求手続き(催告・申立・訴訟提起)を行うことで、時効の一時停止・中断が可能となるため、退職後の残業代請求に比べて時効による減額を避けられるというメリットもあります。
メリット(3)労働条件の改善が期待できる
残業代を支払わない会社の中には、残業代の未払いを把握したうえで支払わない悪質な会社だけでなく、「残業代の未払いを発生させている」ということを把握できていない会社もあります。このような会社の場合、社内の誰かが残業代の未払い問題を提起しなければ、改善することはありません。「労働者が残業代を正当な理由・方法で請求した」という事実が生まれることで、勤務先の会社が労働条件を改善する可能性があります。残業代の未払い問題を機に、労働条件が改善されれば、これまでよりも働きやすい環境で同じ会社に働き続けることが可能です。
デメリット(1)嫌がらせを受ける可能性がある
在籍中に残業代を請求したことが周囲に知られると、「会社に逆らう社員」「トラブルを起こす社員」とみなされ、上司からのパワハラ、同僚からの陰口といった嫌がらせを受ける可能性があります。
デメリット(2)降格や解雇となる可能性がある
「残業代を請求する=サービス残業が当然なのに非常識」と思われるような社風の会社の場合、在籍中に残業代を請求することで、降格(減給)や解雇等の不当な処分が下される可能性があります。

在職中に未払い残業代を請求する方法

(1)労働者自身による残業代請求
弁護士や労働基準監督署に相談・依頼せず、自力で未払いの残業代を請求する方法です。自力で証拠を収集し、未払い分の残業代や遅延損害金等を的確に計算したうえで、会社に対して示談交渉を進めることができれば、労働者自身で残業代を請求することができます。
ただし、専門家ではない方が労働審判の申し立てや訴訟を行うことは困難です。また、立場が弱いことから、会社が強気に出る可能性もあり、労働審判に長引く可能性もあります。労働審判に進んだ場合、必要な申立書等の書面作成作業も労働者自身で行わなければならず、より専門的な知識と時間が必要です。
自力での残業代請求は、他の方法に比べて最も時間や精神的な負担が大きく、スムーズに交渉を進めにくい方法と言えるでしょう。
(2)労働基準監督署による残業代請求
労働基準監督署に相談し、未払いの残業代を請求する方法です。資料の郵送費等を除いた相談料・着手金は無料で、自身で残業代を請求するよりも負担はかかりません。
ただし、労働基準監督署では是正勧告もしくは個人での対処法を教えるのみで、その後の示談交渉等を徹底的にサポートしてくれるケースは多くありません。さらに、労働基準監督署は残業代の未払い問題のほか、労働関係の幅広い違反問題にも対応していることから、場合によっては後回しにされる可能性もあります。
また、労働基準監督署が会社に是正勧告が出されることによって、社内で情報が公となってしまいます。そのため、在籍中場合は、未払いの残業代を請求していることが周囲に知られて、嫌がらせを受ける可能性も否めません。
(3)弁護士による残業代請求
弁護士に相談して、未払いの残業代を請求する方法です。弁護士費用が発生するものの、基本的には打ち合わせをしたり必要な資料を集めたりするのみで、弁護士は代理人として手続きを進めるため、労働者である依頼側の負担は最も小さいと言えます。
また、是正勧告により社内に残業代請求が公となる労働基準監督署と違い、弁護士へ依頼した際の残業代請求に関するやり取りは、水面下で行われることがほとんどです。そのため、在籍中に残業代を請求する場合でも、周囲に知られるリスクを低減させられます。
ただし、弁護士によっても得意・不得意分野があるため、残業代の未払い等、労働問題に関する豊富な実績を誇る専門の弁護士に依頼しなければなりません。

残業代請求の流れ

STEP1:弁護士に相談
まずは、弁護士に相談します。労働関係に詳しい弁護士は多数存在しますが、中でも特に「残業代請求に詳しく、実績の豊富な弁護士」に相談するようにしましょう。
STEP2:証拠の収集
これまで「どれだけの残業をしてきて、どれだけの残業代が支払われていないか」を把握するために、タイムカード等の労働時間がわかる資料を証拠として集めます。
これらの証拠は、労働者自身が収集しなければなりません。
STEP3:未払い残業代の算出
残業代請求の前に、支払われるべき残業代を明らかにします。労働者は、残業代に関する内容が記載された雇用契約書・就業規則や、実際の労働時間がわかるタイムカード、実際に支払われた給料がわかる明細等の準備が必要です。
これらの必要な資料を渡せば弁護士が残業代を算出するため、自身で残業代を計算する必要はありません。
STEP4:会社との示談交渉
必要な資料・証拠と未払いの残業代を算出したあとは、弁護士が代理人として会社と交渉を行います。交渉で話し合いをする前に、内容証明郵便を送付するケースがほとんどです。
示談交渉は基本的に2~3ヶ月程度の期間が必要となりますが、交渉時点で会社が残業代の支払いに速やかに応じれば、早期解決も期待できます。
STEP5:労働審判
会社側に話し合いの意思や支払いの意思が見られない場合は、示談交渉での解決が困難となるため、裁判所での「労働審判」という法的手続きを選択することとなります。
労働審判に必要な申立書や証拠の準備作業は、弁護士に依頼することが可能です。そのため、労働者自身による書面作成等は必要ありません。
労働審判の審理は原則3回以内となっており、基本的に3~4ヶ月の期間がかかりますが、ほとんどのケースで労働審判には残業代の未払い問題が解決します。
STEP6:民事訴訟
労働審判での結果に対し、労働者もしくは会社のいずれかが同意しなかった場合は、裁判所での「民事訴訟」を行います。必要な書面や証拠の準備と整理は、労働審判同様、弁護士が行うため労働者自身で行う必要がありません。
民事訴訟はいわゆる「裁判」のことで、双方の主張に対して法的な判断が下されます。最終的解決までに半年~1年以上の期間が必要となり、労働者も1回以上は必ず裁判所に出向かなければなりません。
しかし、確実な証拠が揃っており勝訴の見込みがある場合は、民事訴訟が最も適切な方法となるだけでなく、未払いとなっている残業代と同額の遅延損害金や付加金も請求できます。
また、民事訴訟で労働者もしくは会社のいずれかが上訴した場合は、高等裁判所での裁判に移行されます。この場合、最終的な判決が下されるまでにはより長い期間が必要です。

示談交渉

ご持参いただいた資料や,お伺いした事情をもとに,残業代を計算いたします。

このタイミングで,会社が保有しているが依頼者の手元にないタイムカードや,労働日報の開示を会社に対して求めていきます。

その結果算出された残業代を,会社に対して請求して参ります。

請求の際,配達証明付き・内容証明郵便を利用いたしますが,これは会社に対して請求した内容・請求した時期を公的に証明するものであり,今後の証拠として保全しておくためになります。

残業代請求においては,2年の消滅時効がある関係で,会社に対し残業代を請求し,時効を停止する必要があり,その請求した時期を明確にして証拠として保全しておくことが重要になります。

事案によっては,請求する際に,会社に対し追加で資料の開示を求めていき,開示があった場合には,当該資料に基づき,残業代の再計算をして,その結果に基づき請求していきます。

弁護士からの請求に対し,会社は,会社側の立場から,反論をしてきます。

その時々で変わりますが,残業代の計算方法や,休憩時間を含む労働時間の捉え方,管理監督者の該当性,固定残業代等について反論してくることが多いです。

会社側の主張に一定の根拠があり,法的にも合理性を有している場合は,その論点について互いの立場から交渉し,調整していきます。

一方で,会社側の主張に法的根拠がない場合には,証拠に基づいた請求を維持していくことなります。

諸々の論点や,証拠を整理したうえで,話し合いにより残業代の金額,支払時期・方法等につき合意に達した場合には、合意書を作成いたします。

合意書に基づき残業代の支払いがなされましたら,無事手続は終了となります。

もっとも,いつも示談交渉で任意に残業代を支払ってくるわけではありません。

その場合には,以下の労働審判や,訴訟手続きを経て請求していくことになります。

労働審判手続き

会社との交渉が奏功せず示談に至らない場合は,労働審判手続きの利用を検討します。

労働審判手続きは,雇用主である会社と労働者との間の労働関係に関する紛争を,その実情に即し,適時・的確に解決することを目的としています。原則として3回で手続きが終了するため,当事者は,早期に的確な主張,立証を行うことが必要になります。

労働審判手続きは,本来,不当解雇や給料の不払いといった紛争を想定していましたが,残業代請求においても,一定数が労働審判手続きを選択し,実際に解決に至っています。

労働審判手続きにおいては,随時,調停の試みがなされ,一定数の紛争が調停によって解決に至っています。

調停の試みが奏功しなかった場合には,労働審判委員会(裁判官と労働審判員2名で構成)により労働審判がされることになります。

労働審判に対しては,当事者から異議の申し立てがなされれば,通常訴訟に移行することになります。

その他,事案が複雑で,短期解決を目指す労働審判手続きになじまない場合は,労働審判委員会は労働審判手続きを終了させることができ,その場合には,通常訴訟に移行することになります。

訴訟手続き

会社との交渉が奏功せず示談に至らない場合のもう一つの解決手段として,訴訟手続きの利用があります。

訴訟手続きは,通常の裁判手続きとなりますので,当事者が証拠に基づいて主張・立証を尽くし,それをもとに判決で解決する手続きになります。

もっとも,判決に至る前に,適宜,和解が試みられますので,裁判上の和解によって解決することも多いです。和解の試みがなされるタイミングは,証拠のうち書証(タイムカードや業務日報などの客観的証拠)が出そろった時点や,その後,人証(証人尋問や当事者尋問)が終了した時点でなされるのが一般的です。

訴訟手続きによる解決は,判決であれ裁判上の和解であれ,終局的解決を図るもので,紛争の蒸し返しはすることができなくなりますので,慎重な手続きとなります。

そのため,解決までに6カ月~1年半ほどかかることもございます。

労働審判手続きか訴訟手続きかの選択

会社との交渉が奏功せず示談に至らなかった場合,労働審判手続きと訴訟手続きの,どちらの手続を選択すべきなのでしょうか。

この点,労働審判手続きと訴訟手続きには,それぞれメリット・デメリットがあり,一概にどちらの手続が優れているということはないので,具体的紛争を前提に,どちらの手続が適しているかを判断することになります。

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