サービス残業とは|実態・罰則・労働者の相談先や企業側の対応策も

サービス残業とは|実態・罰則・労働者の相談先や企業側の対応策も

サービス残業は、従業員に賃金が支払われない残業のことです。社会問題にもなっており、実際にサービス残業に悩んでいる人は多いのではないでしょうか。また、組織によってはサービス残業が当たり前となっているケースもあり、頭を抱える経営者や人事労務担当者も少なくありません。

当記事では、サービス残業の概要や、サービス残業が生まれる原因を解説します。サービス残業をなくす上で必要な対応策も紹介するため、サービス残業をなくしたいと思っている人は参考にしてください。

1.サービス残業とは

サービス残業とは、従業員が法定労働時間を超えて労働しているにもかかわらず、超過分の賃金が支払われない状態のことです。労働基準法では、「1日8時間」「1週間40時間」を労働時間の上限としており、上限を超えた分の労働には残業代を支払う必要があります。

そのため、サービス残業はれっきとした労働基準法違反です。また、従業員の健康管理の観点からも、サービス残業が発生している場合はただちに是正することが必要だと言えます。

1-1.サービス残業の実態

第一生命経済研究所の調査によると、サービス残業時間の平均値は、1か月あたり16.3時間です(2017年現在)。推移を見ると、2010年~2015年は減少傾向にあったものの、2016年、2017年は増加傾向にあります。

また、産業別に見ると「教育・学習支援業」や「宿泊・飲食サービス業」は、特にサービス残業が多い傾向です。一方で、「不動産・物品賃貸業」「インフラ関係(電気やガスなど)」「建設業」などはサービス残業が少ない傾向にあります。

出典:第一生命経済研究所 経済調査部「働き方改革下のサービス残業時間」

1-2.サービス残業の罰則

サービス残業の罰則内容は、下記のとおりです。

6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第37条、117条第1項)

従業員を正しく管理する必要があった上司や経営者はもちろん、企業全体の問題として罰せられる可能性があります。

また、一度労働基準監督署から監督指導が入ると、継続的に厳しい目で見られるでしょう。社内外のさまざまな人・組織からの信頼も失いかねないため、企業として正しく成長する上でも、サービス残業の是正が重要です。

1-3.正しい残業代の計算方法

残業代の計算方法を具体的に解説します。下表に従業員に支払われる割増賃金のパターンをまとめました。

支給条件 割増率
法定労働時間(1日8時間・週40時間)以内なし
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合25%以上
残業が月45時間・年360時間を超える場合50%以上
残業が月60時間を超える場合50%以上
(中小企業は2023年から)
法定休日に勤務する場合35%以上
深夜帯(22時~翌朝5時)に勤務する場合25%以上

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」

実際に、Aさんの例を用いて解説します。

Aさん:通常賃金が1,000円/時の従業員(所定労働時間は9時~17時、うち休憩1時間)

【例1】19時まで残業した場合

17時~18時:法定労働時間内であるため1,000円の支給

18時~19時:法定労働時間を超えているため25%を割り増した1,250円を支給

【例2】すでに当月の残業時間が59時間の状態で19時まで残業した場合(当週はまだ残業なし)

17時~18時:法定労働時間内であるため1,000円の支給

18時~19時:残業が月60時間を超えるため50%割り増した1,500円を支給

なお、残業代を正しく支給するためには、各企業における残業時間の管理を正確に行う必要があります。人事担当者や管理者は、責任を持って残業時間を管理した上で、給与計算に反映させてください。

2.サービス残業が生まれる主な原因

そもそも、なぜサービス残業が発生するのでしょうか。サービス残業を防ぐためには、サービス残業が生まれる原因を明らかにする必要があります。

サービス残業が生まれる主な原因は、以下のとおりです。

  • 定時でタイムカードを押させるよう指示されている
  • 定時前に仕事を開始している
  • 端数時間がカットされている
  • 名ばかり管理職となっている

それぞれの原因を具体的に解説します。

2-1.定時でタイムカードを押させるよう指示されている

原因の一つは、企業が人件費を削減するために、定時でタイムカードを押すように指示していることです。企業側がサービス残業を悪いことと理解しつつ、意識的に実施しているケースも多くあります。

また、長時間残業が社会問題になっているため、企業側が職場での残業の記録を残さないよう、仕事の持ち帰りを指示しているケースがあります。定時に退勤していても、仕事を持ち帰って自宅で行う場合はサービス残業の対象となるため、企業側は十分に注意してください。

2-2.定時前に仕事を開始している

終業後に引き続き仕事を行うことが残業だと認識されているケースは多いですが、定時前に仕事を行うことも立派な残業です。たとえば、「今日締め切りの資料作りが終わらないから、1時間早く仕事を開始した」とします。この場合、1時間分は残業として扱われ、残業代が支払われなければなりません。

本来、定時前に従業員が仕事をせざるを得ない状況にならないよう、企業側が未然に取り計らうべきです。定時前に残業が発生している場合は、業務効率化の方法を検討し、労働環境の整備が必要でしょう。

2-3.端数時間がカットされている

労働基準法上では、残業代は1分単位での支払いが原則です。そのため、企業側の一方的な都合による端数時間のカットは、サービス残業に該当する可能性が高いと言えます。

たとえば、15分~30分以内の残業時間の端数がカットされている場合、実労働に対する賃金を支給しないと従業員にとって不利となるため、切り捨てた端数時間の残業代も支払われる必要があります。

ただし、1か月の合計労働時間を算出する際は、30分未満の切り捨てと30分以上の繰り上げが認められています。管理が煩雑になりそうな場合は、合計時間を算出する際に調整するようにしてください。

2-4.名ばかり管理職となっている

名ばかり管理職とは、法律上の「管理監督者」に該当しないにもかかわらず、管理監督者と同様に取り扱われている従業員のことです。管理監督者に該当する者は、労働時間・休憩・休日における規定の対象外であり、残業代も発生しません。

そもそも、法律上に「管理職」という用語は存在せず、多くの場合、管理職は管理監督者と混同されています。管理監督者として認められるためには、職務内容や権限・責任などにおいて、一定の条件を満たしている必要があります。そのため、多くの管理職は法律上の管理監督者に該当しないことが実情です。

管理職であることを理由に企業から残業代が支払われていない場合は、自分が管理監督者に該当するかどうかを確認してください。

3.【就業者・企業別】サービス残業をなくすための対応策

サービス残業への対応策は、就業者・企業ごとに以下のとおりです。

【就業者の場合】

以下のいずれかに相談する

  • 労働基準監督署
  • 労働組合
  • 弁護士

【企業の場合】

  • 各事業所・部署の管理者を対象に研修を実施する
  • 労働時間の管理・申請システムを適正にする
  • 組織におけるサービス残業是正の方針を明確にする

以下で、サービス残業をなくすための対応策について詳しく解説します。

3-1.就業者の場合

就業者の場合、個人で企業に掛け合っても解決してくれないことがあります。そのため、労働問題について取り扱う場所に相談することがおすすめです。サービス残業で困ったときのおすすめの相談先と、それぞれのメリットや特徴を下表にまとめました。

相談先 特徴
労働基準監督署労働基準監督署からの勧告に対応しない企業には罰則が与えられるため、問題解決の可能性が高いことが特徴です。ただし、労働基準法に違反している明確な証拠がなければ、調査に踏み切ってくれません。そのため、サービス残業の証拠を収集した上での相談がおすすめです。
労働組合労働組合は、労働者の権利を守るために組織されている団体です。企業内労働組合(一般労働組合)の場合は、労働組合員が組織の実情も知っているため、気軽に相談できます。
ただし、企業内労働組合が存在しない場合は、企業外の労働組合である「ユニオン」への相談となります。ユニオンは企業内労働組合よりも企業と争う姿勢が強いため、入念に検討してから相談してください。
弁護士「名ばかり管理職」で残業代が出ずに困っている場合や、未払いの残業代を確実に取り戻したい場合は、弁護士への相談がおすすめです。ただし、弁護士の場合は、相応の依頼料が必要となります。相談料無料としている弁護士も多いため、本格的に依頼する前に一度相談してみるとよいでしょう。

3-2.企業の場合

企業の場合は、人事部門などが主導となって、サービス残業が発生しない労務管理・勤怠管理を整備することが重要です。具体的な対応策と具体例を紹介します。

対応策 各事業所・部署の管理者を対象に研修を実施する
具体例 サービス残業の違法性を共通認識とするために、各事業所・部門の管理者に研修を実施します。さらに、研修後は従業員から定期的に事情聴取し、サービス残業が発生していないか確認を行いましょう。
対応策 労働時間の管理・申請システムを適正にする
具体例 タイムカードの記録が本人の申告と異なる場合や打刻漏れがあった場合、上司にメッセージが送られるシステムを導入します。メッセージを受信した上司は本人に確認の上、正しく修正しましょう。
対応策 組織におけるサービス残業是正の方針を明確にする
具体例 サービス残業がない組織づくりを目指す姿勢を、社内報で全従業員に通知します。その後も研修などを開催し、労働時間の管理方法についての正しい情報を伝えていきましょう。

出典:厚生労働省「賃金不払残業(サービス残業)の解消のための取組事例集」

自社の課題に合った対応策を講ずることがポイントです。まずは、サービス残業が生まれている原因を明らかにし、課題を明確にしてください。

まとめ

サービス残業はれっきとした労働基準法違反です。定時後に継続して働く残業以外にも、定時前の労働や「名ばかり管理職」など、気づかないまま残業しているケースもあります。

残業代の支払いに疑問を感じている人は、抱え込まず労働基準監督署や労働組合に相談しましょう。特に、未払い残業代を取り戻したい場合は、弁護士に相談することがおすすめです。

また、サービス残業に悩む経営者や人事担当者は、残業が起きる原因を把握した上で、課題の解決に取り組みましょう。

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