残業時間は、業種や職種、事業内容で異なります。そのため、残業30時間がほかの会社と比べて長いのか、短いのかがわかりにくいという方もいるでしょう。
そこで今回は、1か月あたり残業30時間は適正かどうかを解説します。また、残業代の計算方法や残業時間を減らすための工夫、未払い残業代を回収する方法についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
1.残業30時間は適正なのか?残業時間の目安を紹介
残業30時間は、適性の範囲内です。実際に働く社員や従業員を対象に行った残業時間の調査データによると、1か月あたりの平均残業時間は約47時間となっています。
残業時間の長さ別の割合では30時間が最頻値で、次いで40時間、20時間です。
また、厚生労働省が公表している時間外労働の実績をまとめたデータでも、1年間の残業時間は平均311時間、1か月あたり約25.9時間となっています。
厚生労働省のデータよりはやや長い結果となっていますが、社員を対象に調査した結果のボリュームゾーンの中央値である残業30時間は、適性の範囲内といえるでしょう。
残業時間の長さには、目安があります。具体的には下記の3つが挙げられます。
残業45時間 | 36協定を締結した場合の時間外労働上限 |
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残業80時間 | 2か月以上80時間を超える残業が続いた場合に、労災認定されやすくなる時間の目安 |
残業100時間 | 1か月でも100時間を超える残業があった場合に、労災認定されやすくなる時間の目安 |
1か月あたり30時間の残業は、36協定や過労死基準のいずれにも該当しません。そのため、残業30時間自体には違法性がなく、適性内といえます。
しかし、残業30時間は36協定や過労死基準に該当しないからこそ、残業時間は軽視されやすくなります。残業時間に対する改善や、残業代の支払いを正しく行ってもらえないといったトラブルが起こりやすくなるため、注意が必要です。
2.残業代の計算方法|残業30時間の金額は?
残業代の計算方法を知らない社員は多く、その状況を利用して不当に残業代を支払っていない企業も少なくありません。そのため、労働者自身が正しい残業代の計算方法を知り、残業した場合の賃金がいくらになるのかを知っておくことが大切です。
残業代は、下記の計算式にあてはめることで算出できます。
残業代=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間
所定労働時間を超える場合、法令により割増賃金を支払うことと定められています。基本時給に対して割増率以上の割増賃金率をかけた金額が、残業1時間あたりの基礎賃金です。
割増賃金率は、厚生労働省の改正労働基準法にて定められています。
法定労働時間を超える時間外労働の割増賃金率は25%以上です。また、残業60時間を超えた場合の割増賃金率は50%以上となります。
1時間あたりの賃金は、所定労働時間の労働に対して支払われる基本時給です。月給制の場合、各種手当を含めた月給を1か月の所定労働時間で割ることで求められます。
ただし、役職手当や資格手当などの労働と関係のある手当は含まれますが、一般的に支給されやすい労働と関係の薄い家族手当や通勤手当、住宅手当などは含まれません。
1時間あたりの賃金=月給÷1年間における1か月平均所定労働時間
月給30万円・1か月平均所定労働時間が165時間で、月30時間の残業を行った場合、残業代は68,175円となります。
- 1時間あたりの賃金
30万円÷165時間=1,818円(1円未満は切り捨て) - 残業代
1時間あたりの賃金:1,818円×割増率:1.25×残業時間:30時間=68,175円
残業代を知りたい方は、ここで紹介した計算式に実際の給与や所定労働時間をあてはめて計算してみましょう。
3.残業30時間の労働者が抱えやすい悩み
残業30時間を長いと捉えるか、短いと捉えるかは個人で異なります。しかし、いずれにしても、1か月30時間の残業することは精神的にも肉体的にも負担が大きく、さまざまな悩みを抱えやすくなります。
ここでは、1か月の残業時間が30時間程度の労働者が抱えやすい悩みについて紹介します。
3-1.実質的な週6勤務で疲労が溜まる
1か月に20日間出勤した場合、残業30時間は1日あたり1.5時間残業していることとなります。
また、残業30時間は、1日の法定労働時間である8時間で割ると約4日分に相当します。
完全週休2日制にもかかわらず、実際には週6日勤務に相当する時間を残業に費やしていることとなります。
残業で帰宅時間が1時間以上遅くなった場合、職業によっては睡眠時間が削られ、疲労が溜まりやすくなるでしょう。
3-2.固定残業代制度(みなし残業代制度)で残業代がごまかされる
勤務先によっては、「固定残業代制度」を導入しているところもあります。
固定残業代制度は、残業代を計算せず一定時間の残業を想定した固定の残業代を支払うことから、みなし残業ともいわれています。
一定の固定残業代が支払われていたとしても、定額以上の残業を行った場合、企業はみなし残業代の分とは別に超過した時間分の給与を残業代として支払う必要があります。
しかし、実際には超過した時間をサービス残業として処理されるケースが多くあります。
就業時間やみなし残業の有無を確認し、残業代が正しく支払われているかを確認しましょう。
4.残業を減らすためにできる5つの方法
残業を減らし、職場環境を改善したりプライベートを充実させたりしたい場合、残業を減らすための工夫を行う必要があります。
例えば、下記の方法をとることで、残業を減らすことが可能です。
●自分の仕事を効率化する
業務を細分化し、優先順位をつけて仕事を行うことで、効率的に作業を進めることができます。また、ルーティン作業の場合はタイマーやストップウォッチを活用し、時間を意識することで効率的に作業できるでしょう。
仕事の効率化は取り掛かりやすい方法です。仕事量が多くないにもかかわらず残業をしてしまうことで悩んでいる方は、まずは仕事の効率化を検討しましょう。
●自分だけで仕事を抱え込まず分担する
自分がこなせる量以上の仕事を抱え込んでいるために、残業時間が長くなっている可能性もあります。仕事量がキャパシティを超えているときは、上司や同僚に相談し、仕事量を減らしてもらうこともひとつの選択肢です。
また、内容をよく理解せずに仕事を引き受けることで士気が低下し、作業効率が悪くなるケースもあります。
作業効率が悪くなることも残業時間に直結するため、仕事を引き受ける際は内容をよく確認し、引き受けることが難しい場合は断ることも大切です。
●平日に予定を入れる
就業時間後に予定を入れることで、「定時で終わらせよう」という前向きな気持ちや仕事の工夫につながります。また、プライベートが充実することで心身共にリフレッシュでき、仕事や生活にもメリハリがつくでしょう。
●残業の少ない会社に転職する
ブラック企業や長時間労働を当たり前とする企業がある一方で、過重労働対策に取り組む企業も増えています。
会業先に対して仕事の効率化や仕事内容の是正を求めても、残業時間や職場環境の改善が見られない場合は、残業の少ない会社へ転職することもひとつの解決策です。
●未払い残業代がある場合は会社に請求する
残業代の支払いが適切に行われていない会社は、労働者を残業させることに躊躇がなく、働き方がなかなか変わらない可能性があります。しかし、規定を超えた労働分の残業代が支払われない状況は違法です。
未払い残業代の請求は、労働者の権利です。未払い残業代を請求することで、会社に対して残業問題の注意喚起ができ、労働契約や労働条件などの勤務態様の見直しを促すこともできます。
未払い残業代の請求で悩んでいる方は、「千代田中央法律事務所」への相談がおすすめです。千代田中央法律事務所では、さまざまな職種の残業代の請求に成功しており、多くの実績を持っています。
未払い残業代を確実に回収したい場合は、千代田中央法律事務所の利用を検討してみてください。
まとめ
残業30時間は、平均的な時間で、労働基準法で定められた基準にも触れない長さであるため適正の範囲内です。しかし、適性の範囲内とはいえ、未払い残業代が発生しているケースも珍しくありません。
残業代に疑問を感じている方は、残業代を計算し、正しく支払われているかを確認しましょう。
月30時間の残業は実質的に週6勤務となります。勤務時間が延びると疲労やストレスが溜まりやすくなるため、残業を減らすための工夫を行うことが大切です。
未払い残業代や長時間労働で悩んでいる方は、「千代田中央法律事務所」への相談がおすすめです。