接待には残業代が発生する?支給されるケース・されないケースを紹介

接待には残業代が発生する?支給されるケース・されないケースを紹介

得意先との深夜にいたる飲み会、休日に開催される取引先とのゴルフコンペなど、多くの方がさまざまな接待を経験していることでしょう。接待によっては大きな負担となることもあり、残業代がほしいと考える方も多くいます。

基本的に接待は、残業代が発生するものではありません。しかし、ケースによっては残業代が認められる場合もあります。当記事では、接待と残業代の関係について解説するため、ぜひ参考にしてください。

1.接待の時間は残業代が発生する?

取引先などを接待する時間には、原則として残業代が発生しません。これは、接待の時間が労働時間に含まれず、残業として認められないためです。

例外的に接待の時間が残業時間として認められるケースも存在します。しかし、一般には、接待の時間は時間外労働として認められないと考えたほうが無難です。

1-1.接待で残業代が発生しにくい理由

残業代が発生する「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下にある時間を意味しています。労働者側から考えると、接待の時間は業務と関係する時間に思えるでしょう。しかし、以下で紹介する理由から、接待の時間を直ちに労働時間として評価できない側面があります。

●業務との関係性が薄い

会食やゴルフといった接待は、取引先との関係を円滑にする目的もあるため、業務と少なからず関連する行為です。しかし、接待の場では、飲食やゴルフといった雇用契約上の主要な業務と直接関係しない行動も多くなります。そのため、業務との関連性は希薄となり、接待時間をそのまま労働時間として評価することは困難です。

●具体的な拘束性が乏しい

接待の時間は日々の業務と異なり、就業時間や就業内容を細かく指定されるものではありません。したがって、接待の時間は指揮命令関係を示す具体的な拘束性が乏しい側面を持っています。

●参加が強制されていない

接待への参加は、必ずしも強制されるものではありません。労働者の都合により拒否できる場合も多く想定され、労働者の自由意思を反映できる余地があります。そのため、使用者の指揮命令下にあるとは評価しにくく、残業代の発生が認めにくい状況です。

このように、接待は直ちに労働時間として認めることは難しいといえます。そのため、基本的に接待の時間に残業代が発生しないと考えられるでしょう。

2.残業代が支給される接待

前項では、接待の時間は労働時間として認めにくく、残業代は支給されないと紹介しました。裏を返せば、労働時間として認められるなら、接待の時間でも残業代が支給されます。

以下では、どのような場合で接待の時間が労働時間として認められるのかを、項目別に解説します。

2-1.会社から参加を強制された場合

接待の時間であっても会社から参加を強制された場合は、労働時間として認められ残業代を請求することができます。例えば、下記のようなケースです。

  • (1)上司などから懇親会参加などを命令されたケース
  • (2)会社が特定の接待への参加を義務付けているケース
  • (3)接待への不参加により人事評価が下げられるケース

(1)や(2)のように、上司や会社による命令で労働者が拒否できないケースでは、労働者は使用者の指揮命令下にあると考えられます。そのため、接待の時間を労働時間と判断でき、残業代が認められやすくなるでしょう。

また、(3)のケースのように明示的な命令がない場合も、労働者が拒否することが難しい状況と認められる場合は、労働時間と判断されることがあります。

2-2.取引先との業務を目的とする場合

接待の時間のほとんどが取引先との業務を目的とする場合は、その時間を労働時間とし、残業代を請求できる可能性があります。

例えば、会食というスタイルをとっていても、時間のほとんどを契約上に必要な交渉、あるいは会社からの企画プレゼンを行った場合などです。重要な業務であればあるほど、取引先との業務における必要性は高くなり、接待への参加の重要性は増すでしょう。

このように、取引先との業務で必要不可欠な内容を含む接待は、その時間を労働時間として認められやすくなります。

2-3.接待中に業務を行う場合

接待中であっても、会社や上司により指示、命令を伴う業務がある場合は、労働時間と見なされやすくなります。具体的には、下記のようなケースが想定されます。

  • (1)会食や宴会の準備など、接待に関わる雑務を指示されたケース
  • (2)接待中の司会・進行役を指示されたケース
  • (3)接待の出席者を送迎する業務を指示されたケース
  • (4)接待中の会話や交渉の記録を指示されたケース

上記のように、接待中、あるいは事前準備などで会社や上司から指示があった場合は、使用者による指揮命令下にあると評価されやすくなります。結果として労働時間と判断され、残業代の請求が認められることへと繋がるでしょう。

3.残業時間と認められない接待

労働時間性を考える場合、労働者が使用者の指揮命令下にあるか否かが重要です。それでは、残業時間・労働時間として認められない接待には、どのようなケースがあるのでしょうか。

以下では、労働者が使用者の指揮命令下にあると評価しにくい2つのケースを紹介します。

3-1.懇親を目的とする場合

懇親会や二次会、接待ゴルフなど、懇親を目的とする接待は基本的に残業時間と認められません。懇親会や接待ゴルフは、取引先との円滑な関係を目的とする場合が多く、業務との関わりのある事柄です。

しかし、懇親会や接待ゴルフの主目的は、飲食やゴルフ、それに伴う会話にあります。労働契約上の主要業務と直ちに繋がるものではなく、労働時間・残業時間と明らかに判断することはできません。

そのため、多くの懇親会や二次会、接待ゴルフなどは残業時間とは評価されにくく、残業代の支給は受けられないと考えられます。

3-2.強制参加ではない場合

強制参加ではない接待も、残業時間としては認められません。会社や上司といった使用者から義務付けられていない場合、指揮命令下にあると判断しにくいためです。

例えば、取引先などの担当者との関係性を築くため、個人的に接待を行う場合があてはまります。あくまで個人の裁量で行われる接待であることから、残業時間とは見なされないと考えておきましょう。

なお、接待への参加における「強制性」については、議論が分かれる部分です。参加が奨励されている程度では、残業代は請求できないと考えられます。ただし、「参加が義務付けられている」「不参加により不利益が生じる」場合は、残業代が請求できるケースもあります。

4.無理な接待は過労死のリスクも

日本では、懇親会での「飲みニケーション」という言葉があるように、接待を通じた交流が文化として根付いています。そのため、会社に勤める多くの方が大なり小なりの接待を経験しているでしょう。

無理な接待は過労死などの労働災害へと繋がるリスクを孕んでいます。実際にある携帯電話端末大手では、接待中に社員がくも膜下出血で死亡した事件が発生しました。遺族である妻が労災認定を求めて訴訟を起こした結果、裁判所は接待の業務性と労働時間性を認定し、労災を認めています。

上記の事例に限らず、無理な接待を強いられている(パワハラ)など、強制的な接待であるにもかかわらず残業代を受け取れていないケースは少なくありません。しかし、接待を労働時間として認めてもらい、残業代を請求することにはさまざまなハードルがあります。

残業代の請求方法で悩んでいる方は、労働問題に強い弁護士に相談することがおすすめです。弁護士は、労働基準法などの関連法律、労働基準法違反の判断基準などに精通しています。法定労働時間・所定労働時間や時間外労働の割増率、労働日数や基礎賃金など、残業代の計算方法を知ることも可能です。

また弁護士は、管理職や人事労務担当といった会社との交渉から、労働基準監督署への相談、労働審判や訴訟まで対応します。パワハラや残業代請求でお悩みの方は、ぜひ労働問題に強い弁護士へご相談ください。

まとめ

接待の時間は、基本的に残業代が発生しないものです。業務との関係性が薄く、また具体的な拘束性に乏しく、参加が強制されていないことなどが背景にあります。そのため、懇親目的の接待や参加が義務付けられていない接待では、残業代請求は難しい状況です。

ただし、会社から指示が合った場合や業務目的の場合などは、残業代の支払いが認められるケースもあります。無理な接待は過労死のリスクも孕む問題であるため、過度な接待でお困りの方は、労働問題に強い弁護士へ相談しましょう。

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