歩合給でも残業代の支払い義務は免除されない

歩合給でも残業代の支払い義務は免除されない

歩合給制を導入している場合,会社側から,「歩合給なので残業代はその中に含まれている」といった反論が見受けられます。

まず,歩合給の場合の割増賃金の計算方法に簡単に触れたうえで,歩合制のもとで,一定額が残業代の支払い分として有効となる要件について解説していきます。

歩合給制での割増賃金の計算方法

割増賃金額の計算式は,一般的には,次の通りとなりますが,

(基礎賃金÷所定労働時間)×時間外等労働時間×割増率

歩合給制のもとでは,

(当該賃金算定期間における歩合給総額÷総労働時間)×時間外等労働時間×割増率

となります。

(※)歩合給の場合の割増率

歩合給の割増賃金の割増率が,例えば法定時間外労働の場合,「×1.25倍」なのか,残業時間に対する時間あたりの基本の賃金部分は支払われているとして,「×0.25倍」なのかについて,

行政解釈では,「歩合給の場合に割増賃金を算出するにあたっては,残業時間に対する時間当たりの賃金は支払われており,残業代として請求できるのは,基礎賃金に割増率を乗じ,それに時間外労働時間を乗じて算定される部分のみ」,すなわち,割増時間外手当として請求できるのは「×0.25倍」部分のみとされていますので注意が必要です。

歩合給でも残業代の支払い義務は免除されない

歩合給や出来高払いは,成果主義的な賃金制度の性質を有するものの,それ自体に労基法37条の割増賃金の支払い義務を免れさせる効果はなく,割増賃金規定の規制は及びます。

そのため,歩合給の中に割増賃金分も含まれているとの主張が認められるためには,その割増賃金の支払い分が固定残業代の支払いとして有効であることが必要になります。

歩合給に割増賃金は含まれているとの主張が認められるためには,固定残業代としての有効要件を満たす必要がある

歩合給や出来高払い制を採用している会社から,「時間外手当は歩合給に含まれている,そのため,歩合の支給率を高くしている」として,当該時間外手当は割増賃金を算出する際の基礎賃金に含めず,また,割増賃金から既払い分として控除されるべきであるとの主張がなされることがあります。

この主張が認められるためには,時間外手当として既払いとの主張が,固定残業代としての有効要件を満たしていることが必要となります。

具体的には以下の要件を満たす必要があります。

対価性の要件

歩合給の中に,時間外手当等が含まれていると認められるためには,就業規則(賃金規程)や,雇用契約書,労働条件通知書等で,歩合給には時間外労働等の対価が含まれるという労使間の合意があることが必要になります。

このような合意がない場合には,固定残業代として有効とはならず,「歩合給に時間外手当等は含まれている」との主張は認められないことになります。

明確区分性の要件

固定残業代の支払いとして有効であるためには,使用者が既払いと主張する時間外手当等の金額が労基法37条に違反していないかをチェックし,時間外労働を抑制する機能を実効的なものにするため,通常の労働時間に対応する賃金部分と,時間外労働に対応する賃金部分が区別されていることが必要となります。

この点,完全歩合給のタクシー運転手の給与に,時間外手当や深夜手当等の割増賃金が含まれていると使用者が主張した案件について,最高裁は,以下の通り判示しております。

これは,固定残業代を基本給に組み込んで支給する場合の有効性の問題になります。 「時間外及び深夜の労働を行った場合においてもその額が増額されるものではなく,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして,この歩合給の支払いによって,法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきである」として,明確区分性の要件を満たさず,歩合給の中に時間外手当等が含まれているとの使用者側の主張を認めませんでした。

まとめ

以上のように,歩合給それ自体に割増賃金の支払い義務を免れさせる効果はなく,歩合給のなかに割増賃金も含まれているとの使用者の主張が認められるためには,当該割増賃金分と通常の労働の対価部分の賃金とが明確に区分されていることが必要となります。

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