残業代請求の消滅時効は当分の間は3年間に延長へ

残業代請求の消滅時効は2年から3年に延長

残業代を含む賃金請求権の消滅時効期間について,改正民法の施行に合わせて,令和2年4月1日より2年から3年に伸長されることになります。

ただ,3年間の時効期間が適用されるのは,施行日以降に,賃金の支払期日が到来する賃金請求権からとなります。

残業代の消滅時効期間は2年から3年に延長へ

残業代を含む賃金請求権の消滅時効については,民法の特別法である労働基準法において2年間の消滅時効期間が定められていました。

この度,民法については,改正民法により,給料等に関する短期消滅時効が廃止されるとともに,一般債権に係る消滅時効について5年間に伸長されたことに伴い,賃金等請求権の消滅時効の在り方について検討がされてきました。

その結果,残業代を含む賃金等請求権の消滅時効について,労働政策審議会は,令和元年12月27日付けで概要以下の内容での建議を行いました(建議内容を抜粋。建議内容については,https://www.mhlw.go.jp/content/11210000/000581932.pdfでご確認ください。)。
これによって,予定通りに改正施行が進めば,改正民法の施行に合わせて,令和2年4月1日に残業代請求権の消滅時効が3年間に伸長されることになります。

賃金請求権の消滅時効期間は,改正民法の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ5年とするが,当分の間,現行の労基法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とする。

賃金等請求権の消滅時効の在り方について

労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存義務については,紛争解決や監督上の必要から,その証拠を保存する意味で設けられていることを踏まえ,賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は5年としつつ,消滅時効期間と同様に当分の間は3年とすべきである。

付加金については,割増賃金等の支払義務違反に対する一種の制裁として未払金の支払を確保することや私人による訴訟のもつ抑止力を強化する観点から設けられており, その請求期間については,賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は5年としつつ, 消滅時効期間と同様に当分の間は3年とすべきである。

新たな時効期間が適用されるのは,施行後に支給される賃金から

新たな消滅時効が適用されるのは,労働基準法が施行されたのちに賃金の支払期日が到来する賃金請求権からとなりますので,予定通り進んだ場合には,令和2年4月以降に支給される賃金が対象になります。

消滅時効の規定が改正されたからといって,その後すぐに遡って3年分を請求することができるわけではないことに注意が必要です。

仮に,令和2年4月に消滅時効の規定が改正されたとすると,消滅時効が3年間に延長されたことが実質的に効果を発揮するのは,令和5年3月以降になることになります。

中小企業への影響を考慮し時効は5年ではなく当面の間3年に

令和2年4月に施行される改正民法が,債権の消滅時効期間が5年に改正されるのに合わせ,残業代を含めた賃金請求権の消滅時効を5年に伸長する意見がありました。

しかし,時効期間が5年間に延びると,労働時間を管理する資料の保管の負担や,保管管理体制の構築による混乱,その他労務管理体制の整備への対応等で,企業,特に中小企業に過大な負担を生じさせてしまうということで,折衷案として,当面の間,時効期間を3年間にすることになりました。

消滅時効の中断

残業代請求を含む賃金等請求権の消滅時効は3年となりますが,時効を中断させれば消滅時効の効果を失わせることができ請求することが可能となります。

残業代請求で,特に重要となるのが時効中断事由である「請求」ですが,ここにいう「請求」とは,裁判上の請求を意味し,裁判外での請求は「請求」にはあたらず「催告」としての効力しか有しません。

具体的には,残業代請求する際,一般的には内容証明郵便を利用して使用者に請求しますが,これは「催告」としての効果しかないため,その後6カ月以内に裁判上の請求をしなければ消滅時効は完成してしまいますので注意が必要です。

その他,使用者が残業代が発生していることを認めた場合には,時効中断事由にいう「承認」に該当しますので,使用者が残業代の発生を認めている場合には,覚書でも合意書でも,その表題は何でも問題ないですので,後々の証拠とするため書面として残しておくことが重要となります。なお,この「承認」は裁判外で行うものでも有効となります。

まとめ

残業代を含む賃金請求権の消滅時効期間について,改正民法の施行に合わせて,令和2年4月1日より2年から3年に伸長されることになります。

この3年間の時効期間が適用されるのは,施行期日以後に賃金の支払期日が到来する賃金請求権となります。

消滅時効の中断方法については,従前どおり変わりはありませんので,消滅時効が迫っている場合には,早急に弁護士にご相談ください。

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