残業代請求に必要となる証拠とは

残業代請求に必要となる証拠とは

残業代請求をする際に,請求する側として,どのような証拠を準備する必要があるのか,その証拠が無ければ請求は認められないのか,どのように証拠を収集していけばよいのか,について解説いたします。

残業代請求の立証責任

残業代請求事件においては,請求する労働者の側で,実労働時間を含めた労務を提供した事実を,証拠に基づいて立証する必要があります。

そして,実労働時間を立証する際には,労働日ごとの始業・終業時間,1時間当たりの労働単価のほか,割増率の関係で賃金単価が異なることから,当該労働時間が法定内労働,法定外労働,深夜労働,法定外休日労働,法定休日労働のいずれに該当するかについて,証拠に基づいて主張・立証する必要があります。

では,具体的には,どのような証拠に基づき立証していけばよいのでしょうか。

実労働時間を証明する証拠

使用者は,労働者の労働時間を適正に把握する義務があるところ,タイムカード等によって適正に労働時間を管理していれば問題ないのですが,これを怠り,実労働時間を適正に管理していなかったり,従事する業務の性質等から労働時間の管理が困難である場合等,労働時間が主な争点になることも多いです。

そのような場合には,労働者は,以下のような証拠をもとに実労働時間を証明していく必要があります。

タイムカード

タイムカードといった客観的証拠によって適正に労働時間が管理されていれば,タイムカードの打刻時間をもって,実労働時間を推定することが多いです。

もっとも,タイムカードが労働時間の管理ではなく,出退勤時間の管理のためになされており,実際の労働時間とは一致しないという事情がある場合には,タイムカードの打刻時間をもって実労働時間を推定しない事例もございます。

業務日報

会社によっては,労働者に始業時間,終業時間を記載させた業務日報の作成を求めている場合もあります。

この業務日報による始業時間,終業時間の記載も,業務上記載されたものですので,労働時間を立証する証拠をしては有益です。

もっとも,使用者の側から,業務日報に記載された時間は,労働者が恣意的に記載したものであり,客観的な資料ではないと争われることも多いです。

その場合は,その他の労働時間を推認する資料や,業務日報に対して使用者が記載内容を承認していた等の事情で補強していくことになります。

日記,メモ

労働者の日記や,手帳へのメモも労働時間を推認させる証拠にはなりますが,それだけでは,客観的証拠として十分であるとはいえませんので,その他の資料(スイカの利用記録や入退室記録等)で補強する必要があります。

Eメール,ラインの送信時刻

Eメール等の送信時刻も,その時点ではメールの作成・送信といった労働をしていたことが分かるため,労働時間の証拠になりますが,Eメール送信の時点まで就労していたことを,別途他の資料で立証する必要があります。

パソコンのログ記録

業務でパソコンを利用する場合,パソコンのログイン,ログオフ記録は,労働時間の証拠となりますが,ノートパソコンなどポータブルの媒体の場合は,その媒体を就業場所で利用していた等,実際に就業していた事実を,他の資料で補強する必要があります。

その他資料

その他,タコグラフや,給与明細書に記載された総労働時間,シフト表等も労働時間を推認する証拠になります。ただ,これら証拠のみで実労働時間を一発で立証できるとは言えず,他の資料で補強していくことが必要となる場合が多いです。

労働時間に関する雇用契約の定め

残業代を計算する際には,1時間あたりの賃金単価を算出する必要があります。

そのためには,所定労働時間(始業・終業時間,休憩時間),所定休日の日数等を,証拠による確定させる必要があります。

それらを証明する証拠として,

  • 就業規則
  • 雇用契約書,労働条件通知書

などを準備する必要がございます。

給与,各種手当の額・性質

1時間あたりの賃金単価を算出する際に,各種手当が,「1カ月の基礎賃金」に含めるべき賃金であることを証拠により証明する必要があります。

それらを証明する証拠として,

  • 給与明細
  • 就業規則,賃金規程

などを準備する必要がございます。

手元に証拠が無い場合

相談者の中には,労働時間を証明する資料が一切ないとして相談に来られる方もいます。

ただ,ご自身で証拠はないと判断していても,弁護士からみると労働時間の証拠に利用できる資料が存在する場合もございます。まずは,ご自身で証拠はないと断定せずに,弁護士にご相談ください

証拠の収集方法

在職中の場合

在職中の場合は,就業規則や,労働時間を証明する資料として,タイムカードのコピー,パソコンのログ記録,業務日報のコピー,シフト表などを入手することが可能な状態にあります。

これらの証拠は,退職してしまうと入手することが困難になりますので,在職中にできる限り準備しておくことが重要になります。

退職後の場合

一方で,退職後になると,就業規則や,労働時間を証明する証拠を入手することが困難になります。

在職中に準備していた資料があれば,何ら問題ないのですが,そのような資料がない場合は,在職中の知人に依頼するなどして入手することが可能かを検討することになります。

タイムカードや,入退出記録といった客観的な記録をつけていた場合には,弁護士に依頼後に,弁護士からそれら客観資料の提出を求めていくことになります。

その他,ご自身が所持しているスイカの履歴や,ラインのやり取り,Eメールの送信履歴等で労働時間等を立証していくことになります。

まとめ

残業代請求に必要となる,実労働時間や,一時間あたりの賃金単価は,請求する労働者の側で証拠に基づいて主張・立証していく必要があります。

これら資料を,使用者側が保有していることが多いですが,使用者がそのような証拠を有していることを証明することで,使用者に証拠の提出を求めていくことが可能になりますので,使用者がどのような方法で労働時間を管理していたかを知っておくことも重要になります。

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