年俸制と残業|残業代が出る・出ないの見分け方と計算方法を解説

年俸制と残業|残業代が出る・出ないの見分け方と計算方法を解説

年俸制とは、1年単位で給与額を定める制度のことで、年俸を12分割した給与が毎月支払われます。
一方で、「残業代は、年俸制の場合は支払われない」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

年俸制で働く場合も、法定労働時間を超過した分は残業代が発生します。

本記事では、年俸制で残業代がもらえる条件・残業代の計算方法・残業代が支払われないケースに関して紹介します。
年俸制で働く方や、残業代の未払いに悩んでいる方は、参考にしてください。

1.年俸制でも残業代は発生する

年俸制とは、「年間に支払われる給与額を、1年単位で事前に決める給与支払い方法」のことです。
年俸を12分割した金額が、給与として毎月支給されます。

年俸額は、自社の給与体系に基づいて算出するか、使用者が労働者側に金額を提示して決定されます。

また、年俸制においても残業代に関する規則は適用されるため、毎月の労働時間を正しく把握しましょう。
以下では、年俸制において残業代が発生するケースを説明します。

1-1.労働時間の規制は年俸制でも変わらない

労働基準法では、法定労働時間として「1週間の労働時間を40時間、1日の労働時間を8時間」と定めています。
法定労働時間を超過した部分は残業に該当するため、年俸制であっても超過分は残業代を請求可能です。

残業代の算出に用いる、時間外勤務手当・休日勤務手当などの割増率も月給制の場合と同様で、労働基準法に則ります。

また、法定労働時間と似た用語に「所定労働時間」があります。
所定労働時間とは、就業規則や労働契約の中で企業が定めた就労時間です。

例えば「始業が午前10時で終業が午後5時(うち休憩1時間)」などの勤務形態が挙げられます。
この場合、実際の労働時間は6時間となり、午後7時まで残業したとしても法定労働時間は超えないため、残業代は発生しません。

ただし、会社の定款や就業規則に「所定労働時間を超過した分は割増賃金を支払う」などの記載があれば、割増賃金に相当する額を請求できます。

1-2.外資系企業やベンチャー企業でもルールは変わらない

外資系企業やベンチャー企業であっても、労働基準法が適用されます。
そのため、残業代に関する規定も他の企業と変わりません。

年俸制では、年間に発生する人件費を先に決定できることから、中長期的な計画が立てやすくなるというメリットがあります。
そのため、外資系企業やベンチャー企業を中心に年俸制を導入する企業は増加傾向です。

「年俸制を採用している外資系企業やベンチャー企業の場合は残業代が出ない」と考える方も多くいますが、法定労働時間を超えれば残業代は発生します。

外資系企業やベンチャー企業で働く方も、自分の労働時間は適切に把握しましょう。

2.年俸制で残業代が出ないケース

一般的な雇用形態の労働者は、年俸制・月給制を問わず、労働基準法に基づいて残業代が発生します。

ただし、働き方や労働契約によっては、残業代が出なかったり、残業代の一部があらかじめ給料に含まれていたりするケースがあります。

以下では、年俸制で残業代が出ないケースを紹介します。
残業代が出る場合と、出ない場合の違いを理解し、現在の働き方や労働契約書の内容が適正であるかを確認しましょう。

2-1.裁量労働制のみなし労働時間制で働く労働者

裁量労働制とは、実際の労働時間に関係なく、特定の時間分をすでに労働したものとみなす制度のことです。
「みなし残業時間制」「みなし労働時間制」などとも呼ばれます。

みなし残業時間制の場合は、「月のみなし残業が○○時間、固定残業代が△万円」などの内容が契約書に明記されています。
既定の時間内の残業代は、あらかじめ支給額に組み込まれているため、追加で残業代が発生することはありません。

一方で、月の残業時間がみなし残業時間を超えた場合は、超過分の残業代を請求できます。

2-2.管理監督者

労働基準法では、「管理監督者」への残業代の支払いは不要とされています。
以下は、労働基準法で定められた、管理監督者に該当する基準です。

  • (1)経営者と近い権限を有している
    経営に対する発言権・人事権など、一般の労働者が持っていない権限を持っていることを指します。
  • (2)自らの労働時間を自由に決定できる
    管理監督者には、時間に関係なく、緊急で対応を求められるケースがあります。
    そのため、自分の裁量で勤務時間を決定する権限を持ちます。
  • (3)残業代が不要なほどの高待遇を受けている
    ほかの労働者と比較して高額な給与や役職手当をもらっているなど、明らかに高待遇な場合は管理監督者に該当します。
    ただし、給与や役職手当の金額は業界や業種によって異なるため、あくまで目安のひとつです。

上記項目に該当しない管理者は、俗に言われる「名ばかり管理職」に当たります。
管理監督者の条件を満たさない方は、労働基準法に則って、残業代を請求することが可能です。

2-3.個人事業主

会社と「業務委託契約」を結んでいる個人事業主の場合は、会社に雇用されていないため、労働基準法の適用外となり、残業代が支払われません。

また、個人事業主の場合は、税金・保険関連の手続きも自分で行う必要があります。

万が一、会社側の一方的な都合で、雇用ではなく個人事業主となっている場合は、労働問題に精通した弁護士へすぐに相談しましょう。

3.年俸制における残業代の計算方法

年俸制の場合でも、残業代は労働基準法に基づいて計算します。
以下は、残業代の算出方法です。

残業代=1時間あたりの基礎時給 × 種別ごとの割増率 × 残業時間

例として「年俸600万円、月平均の労働時間が180時間、残業時間が40時間」の条件で、残業代を算出します。

(1)1時間あたりの基礎時給を算出する

1時間あたりの基礎時給=年俸÷支払い月数÷月平均の労働時間

今回の条件の場合は、以下の計算式となります。

600万円(年俸)÷12か月(支払い月数)÷180時間(月平均の労働時間)
1時間あたりの基礎時給は、約2,777円となります。

(2)種別ごとの割増率をかける

時間外労働には、深夜労働・法定休日労働など、さまざまな種類があります。
時間外労働の種類によって、残業代を算出する際の割増率が異なるため、注意しましょう。

以下は、割増率の例です。

  • 時間外労働:1.25倍
  • 法定休日労働:1.35倍
  • 深夜労働:1.25倍

今回の条件では、残業時間の40時間が、全て通常の時間外労働(割増率1.25倍)として計算します。
基礎時給に割増率をかけることで、残業1時間あたりの時給が分かります。

2,777円(基礎時給) × 1.25倍(割増率)
残業代を含めた1時間あたりの時給は、3,472円となります。

(3)残業時間をかける

残業代を含めた1時間あたりの時給に、残業時間をかけることで、残業代を求めることができます。

3,472円(残業時給) × 40時間(月の残業時間)
月の残業代合計は、138,800円となります。

上記では、残業の割増率を単純化しましたが、深夜や法定休日に働いていた際は割増率が変わることから、計算がより煩雑になります。
また、残業代の請求には3年間の期限があるため、未払いの残業代がある際は早めに請求をしましょう。

未払いの残業代に悩んでいる場合は、労働問題に強い「千代田中央法律事務所」に相談することがおすすめです。

また、残業代を請求する際には、以下の証拠があると役立ちます。

  • タイムカード
  • 勤怠表
  • 社内メールの送信履歴
  • 給与明細書
  • 源泉徴収票

必要な証拠を揃えたうえで残業代請求を依頼しましょう。

まとめ

年俸制であっても、労働基準法に基づいて残業代を請求できます。
ただし、裁量労働制の方や管理監督者の方は、基本的に残業代が支払われません。

未払いの残業代に悩んでいる場合は、今回紹介した計算方法を基に、残業代を計算して請求を行いましょう。

ただし、残業代を請求をする際は、法律に則った手続きや、会社の賃金に関する規定を理解する必要があるため、ひとりで解決することは困難です。
千代田中央法律事務所には、労働問題に強みを持つ弁護士がいるため、早期解決にむけた支援を行えます。
未払いの残業代に悩む方は、ぜひご相談ください。

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